「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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9.耐性(たいせい)

(類型A)日常語で言い換える

[複合] 耐性菌(たいせいきん)(類型A) 耐性(たいせい)ウイルス(類型A)
[関連] 抗生剤(こうせいざい)(類型B)

まずこれだけは

抵抗性 
細菌やウイルスが薬に対して抵抗力を持つようになり,薬が効かなくなること

少し詳しく

 「同じ薬を繰り返し使うことによって,細菌(→15 ウイルス)ウイルス(→15),がん細胞などが,その薬に耐える(抵抗する)力を持つことです。その結果,これまでは効いていた薬が効かなくなってきます。この場合は,量を増やしたり,別の薬に切り替えたりする必要があります」

時間をかけてじっくりと

 「これまでは効いていた薬を使っても,細菌やウイルス,がん細胞などの増殖を抑えることができなくなったとき,『耐性ができた』『耐性を獲得した』などと言います。万能薬のように使われていた抗生剤(抗菌薬 →13.MRSA[関連語])が効かない『耐性菌』(→[複合語])が生まれたのも,抗生剤の使い方を誤ったために菌が耐性を獲得したのが原因です。がん細胞も,性質が変化して耐性を獲得し,薬の効果が見られなくなるときがあります」

こんな誤解がある

 人が病気や薬の副作用などに耐える性質だとする誤解がある。一般語にある「ストレスに対する耐性がない若者」などの用法から類推されたものと考えられる。全く異なる意味に解釈されるおそれがあるので,誤解されないように「菌が」などと主語を明確にする必要性が高い。

効果的な言葉遣い
  1. 「耐性」という言葉は,医療以外の分野でも使われるが,[こんな誤解がある]に述べたように意味は異なっている。また,そもそも一般の人は,この言葉にあまりなじみがないので(認知率59.5%),「耐性」という言葉は,できるだけ使わないようにし,[まずこれだけは]に示した表現などで言い換えたい。
  2. 「耐性菌」「耐性ウイルス」(→[複合語])について理解してもらう場合など,「耐性」という語を使う方が説明しやすい場合もあろう。その場合は,[少し詳しく][時間をかけてじっくりと]に示したような表現を用いて,分かりやすく説明するようにしたい。
  3. 「耐性」や「耐性菌」「耐性ウイルス」を理解してもらうために,例として「MRSA」(→13)に言及して説明することも効果がある。
不安を和らげる

 患者に使っていた薬に対する耐性ができたことを説明する場合,無造作に「薬が効かない」と言うと,不安を感じる患者もいる。そのような場合,「十分に適切に使わないと菌は消えにくい」「これまで使っていたものは使えない」など,「効かない」という言い方を避ける配慮も必要である。

複合語

耐性菌(類型A)

[説 明]
 「退治する薬が効きにくくなった細菌のことです。細菌による感染症に対して,抗生剤を使い過ぎたため,細菌が抵抗力を持って,抗生剤が効きにくくなったものです。『MRSA』(→13)と呼ばれる『メチシリン耐性黄色(おうしょく)ブドウ球菌』は,耐性菌の一種です」

耐性ウイルス(類型A)

[説 明]
 「退治する薬が効きにくくなったウイルス(→15)のことです。例えばインフルエンザを治すために作られた薬オセルタミビル(商品名『タミフル』)が効きにくくなった,インフルエンザウイルスなどがあります」
©2008 The National Institute for Japanese Language