「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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7.生検(せいけん)

(類型A)日常語で言い換える

[関連] 病理検査(びょうりけんさ)・病理診断(びょうりしんだん)(類型B) 病理(びょうり)(類型B)
 組織診断(そしきしんだん)(類型A) 細胞診(さいぼうしん)・細胞診断(さいぼうしんだん)(類型A)
 確定診断(かくていしんだん)(類型B)

まずこれだけは

患部の一部を切り取って,顕微鏡などで調べる検査

少し詳しく

 「患部の一部をメスや針などで取って,顕微鏡などで調べる検査です。病気を正確に診断することができます。この検査の結果によって,診断をはっきり決めます」

時間をかけてじっくりと

 「患部の組織の一部を,麻酔をしてからメスや針などで切り取って,顕微鏡などで調べる検査です。この検査によって,病気を正確に診断することができます。例えば,がんの診断の場合,まず,画像検査や内視鏡検査を行って,病気がどこにあり,どんな様子かを推定します。その結果,がんである疑いが強く出れば,患部の一部を切り取る検査をし,その場所や状態を推定します。この検査によって,診断を確定し,治療に進みます」

言葉遣いのポイント
  1. 「生検」という言葉は,一般になじみがないので(認知率43.1%),医療者間での使用にとどめたい。患者に対して「生検をします」などとは言わず,[まずこれだけは][少し詳しく]に示した表現などを使い,「患部の一部を針などを使って取って顕微鏡で調べます」のように言うのが望ましい。
  2. 何の病気であるかを診断する場合,はじめに画像検査や内視鏡検査で,どこに病気があるのかを確認し,それから正確な診断を行うための検査に進むという順序があること,正確な診断のために患部を切り取る検査を行うことを説明すると,患者の理解も進みやすい。
患者はここが知りたい
  1. 患部の一部を切り取って調べる検査と言っても,具体的な検査手順や痛みについてイメージできない患者が多い。メスを使って切り取る,針を刺す,鉗子(かんし)1で採取するなどの採取の方法,どれくらい採取するのか,どの程度痛いのかという点について,具体的に説明することが大切である。
  2. 検査の結果はいつ出て,どのように知ることができるのかについての見通しを,丁寧に伝えることも必要である。
不安を和らげる

 痛みに対して恐怖感を抱き,検査を嫌がる人も多い。痛みの程度や,痛みへの手当ての方法などを話すことで安心してもらい,病気の治療に進むために重要な検査であることをよく説明したい。

ここに注意

 「生検」という言葉は,医療者間での使用にとどめる方がよいが,「生検」という言葉そのものを説明する必要が生じた場合は,次のように説明すると分かりやすい。

「『生検』は,『生体検査』を略した言葉で,生きたからだを検査するという意味です」

こうした言葉の説明をした上で, [時間をかけてじっくりと]に記したような内容の説明を行うとよい。

関連語

 重大な病気の検査にかかわる用語は,一般になじみのないものが多い。検査が必要であると言われた患者は,それだけで不安も大きいので,分かりにくい用語を不用意に使うことで不安を増大させないように注意が必要である。以下に挙げる専門用語は,使わなくても説明は可能である場合が多く,平易な言葉を用いるように心掛けたい。患者が受けることが必要な一連の検査の流れと,それぞれの検査の目的や重要さが理解してもらえるように,説明を工夫したい。

病理検査・病理診断(類型B)病理(類型B)

[説 明]
 「患部の一部を切り取った組織や細胞などを,顕微鏡などで調べる検査のことです。『病理』と略して使われることもあります。『生検』と同じような意味で用いられますが,『生検』が,組織を切り取るところを主に指すのに対して,『病理検査』は顕微鏡で調べるところを主に指します。病理検査の結果による診断を『病理診断』と言います。平成20年からは『病理診断科』が置かれるようになりました。組織を取って診断する『組織診断』と,細胞を取って診断する『細胞診』とがあります。この病理検査は,主治医とは別の専門医によって行われます。その専門医のことを『病理医』と言います」
[注意点]
 「生検」と同じく,患者に知られていない言葉であるので,説明なしには使わないようにしたい言葉である。[説明]の第一文のように言い換えたり,第二文以下も続けて詳しく説明を添えたりする必要がある。

組織診断(類型A)

[説 明]
 「病気が疑われた部分から取った組織を,顕微鏡などで調べ,何の病気であるかを診断することです。『病理診断』の一つです。例えば,患部の一部を針などで切り取って顕微鏡で調べることで,がんかどうかを診断することができます」

細胞診・細胞診断(類型A)

[説 明]
 「病気が疑われた部分から取った細胞を,顕微鏡などで調べ,何の病気であるかを診断することです。『病理診断』の一つです。例えば,痰(たん)に含まれる細胞を取って顕微鏡で調べることで,肺のがんかどうかを診断することができます」

確定診断(類型B)

[説 明]
 「何の病気であるかをはっきりと決める診断のことです。例えば,がんの場合,画像検査などで病気が疑われた場所について,その組織を取って顕微鏡などで調べます。この診断で,がんかどうかを最終的に判断します。病気を確定することで,治療の方針を決め,実際に治療に進むことができるようになります」
[注意点]
 「確定」も「診断」も分かりやすい言葉だが,「確定診断」は何を確定する診断なのかが患者には分かりにくい。説明の必要性が高い言葉である。

(注)
1.鉗子(かんし) はさみのような形をした,物をつまむ道具。

©2008 The National Institute for Japanese Language