「病院の言葉」を分かりやすくする提案

病院で使われている言葉を分かりやすく言い換えたり説明したりする 具体的な工夫について提案します。

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4.誤嚥(ごえん)

(類型A)日常語で言い換える

[複合] 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)(類型A)
[関連] 嚥下(えんげ)(類型A)

まずこれだけは

食物などが気管に入ってしまうこと

少し詳しく

 「食べたり飲んだりしようとしたときに,飲食物が食道ではなく気管に入ってしまうことです」

時間をかけてじっくりと

 「食べたり飲んだりしようとしたときに,飲食物が誤って食道ではなく気管に入ってしまうことです。飲食物を飲み込む力が弱かったり,飲み込む神経の働きが悪かったりすると起こりやすいのです。飲食物が気管に入ると激しくむせるのは,それを押し出そうとするからです。飲食物だけでなく唾液(だえき)が気管に入る場合もあります。口から肺に細菌が入ることで病気を引き起こすきっかけにもなります」

こんな誤解がある

 飲食物ではない異物を飲み込んでしまうこと(誤飲)だと誤解している人がある(13.9%)。「誤飲(ごいん)」と「誤嚥(ごえん)」は発音も似ていて混同されやすいので,注意したい。

言葉遣いのポイント
  1. 認知率は50.7%と低く,一般に知られていない言葉であるが,この言葉を患者に使っている医療者は多い(医師82.4%,看護師・薬剤師53.5%)。「誤嚥(ごえん)性肺炎」など病名の場合はやむを得ないが,そうでない場合は,日常語で言い換える方がよい言葉である。
  2. 「誤嚥の危険が大きい」は「食べた物が気管に入ってしまう危険が大きい」,「誤嚥しやすい食べ物」は,「間違って気管に入ってしまいやすい食べ物」などのように言い換えると分かりやすい。
ここに注意
  1. 「嚥(えん)」は義務教育では学ばない漢字で難解であり,「誤嚥(ごえん)「嚥下(えんげ)(→[関連語])など医療の分野の言葉にしか普通は使わない漢字である。かといって「誤えん」のように交ぜ書きにしても分かりにくい。「誤嚥」「嚥下」という言葉自体,患者にはなるべく使わないようにしたい。
  2. 「誤嚥性肺炎」という病名など,診断の際にこの言葉を患者に伝える必要があることも想定される。その場合は,「嚥」という漢字は飲み込むという意味であること,つまり「誤嚥」は,誤って違うところに飲み込んでしまうことであることを,上記[少し詳しく]に示した表現を使うなどして分かりやすく説明したい。
複合語

誤嚥(ごえん)性肺炎(類型A)

[説 明]
 「飲食物や唾液が食道ではなく気管に入ってしまったときに,口の中にあった細菌が気管や肺に流れ込んで起きる肺炎のことです」
[注意点]
 「誤嚥」という言葉は一般に知られていないので,病気の起きる仕組みについて分かりやすい説明を添える必要がある。
関連語

嚥下(えんげ)(類型A)

[説 明]
 「飲み込むことです。『嚥下障害』は,飲食物をうまく飲み込むことができないことを言います」
[注意点]
 「誤嚥」と同様に「嚥下」も一般にあまり知られていないので,日常語で言い換える方がよい言葉である。「嚥下障害」などと診断する場合も,日常語で説明を付ける必要がある。
©2008 The National Institute for Japanese Language